海外ビッグクラブにおけるマーケティング活動の裏側 ~FCバルセロナ・ACミランが考える日本でのマーケティング展開~

講師:浜田 満 氏(株式会社Amazing Sports Lab Japan 代表取締役社長兼CEO)

今回講演していただいた浜田満氏は株式会社Amazing Sports Lab Japan 代表取締役社長兼CEOを務め、主にFCバルセロナ・ACミランを始めとするヨーロッパのサッカークラブの日本におけるマーケティング権利を購入し、日本のファン向けオフィシャルサイトの運営、プレシーズンマッチの代行、ローカルスポンサーの獲得など、幅広い業務を行っています。

講義では、株式会社Amazing Sports Lab Japan が行っている業務の紹介や海外ビッグクラブのマーケティング事情をご説明していただきました。また、現在進行中の新規プロジェクトや今後浜田氏自身が生み出していきたいビジネスなどの貴重なお話もしていただきました。

■転職を経て独立へ

関西外国語大学ではスペイン語を専攻し在学中にスペイン・マラガへ1年間の語学留学を経験。
二度の転職を経て、当時ヨーロッパのサッカークラブのオフィシャルショップを運営していた、株式会社日本スポーツビジョンに2003年7月入社。サッカーに精通しスペイン語を話せるということで、ライセンスマーケティング部門の担当を任された。このときからサッカーの仕事をし始める。
2004年3月、会社が民事再生法を申請したのをきっかけに、独立の道を決意。
FCバルセロナと掛け合い、2週間のソシオ受付代理店の権利を獲得し、有限会社ムンドアレグレを設立。
2006年7月、FIFAプレーヤーエージェントであるAmazing Sports Labと業務提携を結び、株式会社Amazing Sports Lab Japan に名称を変更し、現在に至る。

■2週間で504名のソシオ獲得

独立を決め、最初にしたことは「FCバルセロナへ事業計画書を送る」ことだった。
内容は「日本のバルセロナファンをソシオへ入会させ、その代理店を行う」というもの。
当時の副会長へ直接送ったところ、「2週間だけ代理店としての権利を与える」という許可をもらった。
すぐさま日本の自宅でサービスを開始。瞬く間に申込が届き、結果2週間で504名のソシオを獲得するのに成功した。
バルセロナ側も日本のマーケットの可能性を実感。クラブ側の信頼を勝ち取ることにも成功し、現在の仕事に繋がっている。

「海外のクラブが日本で仕事をする際の手助けをするのが我々の役目」

■Amazing Sports Lab Japan の業務紹介

<プレシーズンマッチエージェント>
「FCバルセロナジャパンツアー’07」
・拠点を横浜Fマリノスホームタウンの「マリノスタウン」に置き、トップチームの練習、バルセロナスタッフによるフレンドリーマッチなどを一か所で行うことで、期間限定「バルセロナタウン」を作り出した。
・「バルサポイント」をマリノスタウン内グッズショップに特設し、FCバルセロナの全てが凝縮されたスペースを演出。

<オフィシャルサイト・オンラインショップ運営>
FCバルセロナ・ACミラン・アーセナルの3チームを企画・運営
・「FC BOTIGA」(FCバルセロナオフィシャルオンラインショップ)はスペイン以外で唯一存在するサイト
・サンリオファーイースト、ユニセフなどとのタイアップ商品をプロデュースし、販売をしている。
・2008年11月より「アーセナルオフィシャルサイト」「アーセナルオンラインショップ」を開始予定。

<キッズキャンプコーディネート>
「FCバルセロナキッズキャンプ2007」「FCバルセロナキッズキャンプ2008」を開催
・2007年は18日間で計190名の子供たちが参加。
・2008年は参加者の中から優秀選手を1名選出し、現地のバルセロナ下部組織の練習参加をコーディネート
・クラブとの契約締結、オフィシャルキットの製造、プロモーション、メディアミックス等の業務を請け負った。
・実際に行っている練習内容は日本と変わらないが、コーチが指導するポイント・目をつけるポイントが日本の指導者とは歴然とした差があり、本場のコーチングの凄さを実感した。
・近い将来は日本に「FCバルセロナスクール」を常設し、12歳~13歳の優秀な選手を現地の下部組織へ入れるような流れを作りたい。

<取引先クラブ一覧>
リーガエスパニョーラ(スペイン)・・・FCバルセロナ・バレンシアCF・アトレティコマドリード
セリエA(イタリア)・・・ACミラン・インテル・ユベントス・ASローマ
プレミアリーグ(イングランド)・・・アーセナル・マンチェスターユナイテッド・リバプール

■Q&A

Q・・・「文化としてのサッカーという観点で見た、欧州と日本の違いとは?」
A・・・「まず、欧州の人々はサッカーを生活の基本に置いて、その他の予定はその後に組まれる。日本はその逆で、他の予定を組んでからサッカーの予定を組み込む人が多い。根本的なサッカーの位置づけが両国では相当な差があるのが現状である。また、スタジアムを見ても欧州は駅から近い、立地がよい場所に建てるが、日本は郊外にスタジアムを建てているところが多いため、気軽に観戦することができない。」

Q・・・「バルサが日本で行っているファン拡大戦略は?」
A・・・「特に目立った活動はしていないが、プレシーズンツアーを2年置きに北米と日本で交互に行っている」

Q・・・「バルサが考える世界中を対象としたマーケティング戦略は?」
A・・・「今現在、バルサには11カ国の選手が在籍している。世界各国のスター選手を集めることで、世界中のファンを直接的に増やす戦略を取っている。例えば、マルケスという選手はメキシコでは大スターであるし、同様にエトー、グジョンセン、フレブなども自国のスター選手であるので、それによってその国のテレビ視聴率は上がり、結果的にバルサ人気につながっている」

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